嘘から出たまこと。

初恋の話をします。中学1年生の時に隣のクラスの女の子を好きになりました。仮に真琴ちゃんとしましょう。

隣のクラスには親友の天野くんが居たので毎日のように行ってたんですけど、最初は名前も知らなかったし、全然好きとかじゃなくて「あー、可愛い子だなぁ」程度の感情でした。

 

中1とかそんくらいの時って『誰のことが好きか』みたいな話をよくすると思うんですけど、正直そういう感情が無かったんですよね。

しいて言うなら、安室奈美恵さんか相川七瀬さんかで悩んでたってところでしょうか。「えー、どっちかなんて選べないよー」っつって、十数年後に国会議員になって『一夫多妻制』にするって野望を持つようになります。

このあと少し経ったら安室さんは結婚しちゃって、一夫多妻制とかどうでもよくなるんですけどね。

 

安室さん結婚のニュースが流れた日は、同じクラスの篤志くんと泣きじゃくりました。「どうして5年、待ってくれないの!?」っつって。

篤志くんが本気で泣いてる横で、こっちは嘘泣きしながら「まだだ、たかがメインカメラをやられただけだ!」っつってフザけてただけって説もありますけど。

 

いずれ、好きな女の子が身近に居なかったので、弱みを握られることも無く平穏無事に中学校生活を満喫してました。

でも、そういう時って捏造してくるんですよ。なにかと理由を付けて、でっちあげてくるんです。

 

ある女子が急に「あんた、真琴ちゃんのこと好きでしょ?」みたいなことを言ってきたりして。

 

名前がわからなかったので「は?誰それ?」みたいなリアクションしかできず、よくよく聞いたら『毎日、隣のクラスに通っている』というのが決め手なんだそうです。

「それは、天野に・・・」って言いかけて止めました。天野くんと噂になったら割とマジっぽくて笑えなかったので。

もう馬鹿馬鹿しくて否定する気すら起きないんですけど、そんなん言われたら気になるじゃないですか?

 

早速、隣のクラスの天野くんに聞くんです。「真琴ちゃんって誰?」っつって。

「あー、俺の隣の席の子」って言われて「あー!あの可愛い子か!」っつって。

名前と顔が一致した瞬間でした。

 

それ以来、天野くんに会いに行ってんのか真琴ちゃんを眺めに行ってんのかがわからなくなってくるんですよ。

ほんで、天野くんと喋って笑ってる真琴ちゃんを見てると腹立ってくるんですよね。

「アイツ別に面白いこと言ってないのに!」っつって。「アイツ全然面白くないのに!」っつって。

 

そのうち我慢できなくなってきて、天野くんが学校休んだタイミングで天野くんに成りすますって技を使うんです。「おはよー」っつって普通に真琴ちゃんの隣に座るっていう。

「あ、天野くんの・・・」みたいな感じになるところを遮って「前の顔があまりにも醜かったから整形してきた」っつって、何食わぬ顔で座って普通に授業を受けました。

国語の授業だったんですけど「先生がどうやらボケてるらしい」みたいな噂がありまして、どうやらその日をもって『本物』と認定されたようです。

 

いずれ、それをキッカケに仲良くなりました。真琴ちゃんと一緒に帰れるときは部活を休みにしたり、隠してた自転車も無かったことにして歩いて帰りました。

本当は部活あるんですよ?あるんですけど「今日、自主練みたい」っつって嘘ついて。

帰ってる途中に色々な話をするんですけど「どんな女の子が好き?」って聞かれたら、わざと真琴ちゃんとは逆のことを答えてたのを覚えています。

 

見た目はちびまる子ちゃんみたいな感じで、おかっぱ頭に真っ赤なほっぺが可愛いと思う。服装は、フリフリの女の子らしい格好が好きかなぁ・・・っつって。

彼女に自分の気持ちを悟られたくない一心で嘘ばっかついてました。この恋は嘘から始まりました。

 

この数か月後、一緒に動物園に行くことになります。

サラサラの長い髪がヘルメットみたくなっており、お母さんの化粧道具を無理に使ったせいかほっぺだけがやたら赤く、フリフリのフリルだらけの「お嬢ちゃん、ピアノの発表会?」っつーような服装で現れた彼女。

 

こいつはまさに『嘘から出た魔物』だ。

 

なんつって。

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