学校の先生のモノマネが上手な奴。

12年くらい前の話なんですけど、携帯電話の普及率が大幅に上がってきたかなーって頃。当時の最先端で『音声ロック』って機能が付いてる携帯電話を買いました。

自分の声でロックしておけば、誰も解除できないって優れ物なんですけど、まだ普及したてだったせいなのか、技術が甘かったのか。その機能ってのは完璧とはほど遠くて、あまり使い物にならなかったんですね。

というのは親友の堀くんが、おりのモノマネをして解除できるんですよ。「ダメなやつじゃん、これ」っつって。「使えないやつじゃん、これ」っつって。

まぁロックとしての機能は果たさないですけど、笑いのタネにはなりますよね。これを使って、なんとして楽しい遊び方をするかって方向にベクトルが働くわけです。

「これで堀のモノマネレベルを上げよう!」っつって、色んな先生の言葉でロックして遊んだものです。解除できなかったら「まだまだ修業が足りんなー」っつって、反省点をレポートにまとめたり。

その情熱を勉学に向けてたら東大とか合格できたんじゃねーかな?っつーくらい一生懸命やってました。

何がそんなに面白いの?って今なら思いますけど、当時は面白くて仕方なかったですよ。キャッキャ言いながらやってました。

そんな堀くんとは未だに親交がありまして、離れたところに住んでるのもあって年に2回とかですけど一緒に飲んだりします。

ちょうど今年のお盆休みに同級生何人かで飲み会をやったんですけど、たまたま、その『音声ロック』の話になりました。

「ありゃー傑作だったなー」なんつって「久々にやってくんね?」ってなるわけですよ。「最近、忙しいんですか?山本先生?」って言えば、すかさず堀くんが山本先生のモノマネで返してくるって流れで、もう爆笑に次ぐ爆笑で楽しく飲んでたんです。

何人もの先生のモノマネができるっつっても、堀くんにも得意・不得意ってのがありまして、音声ロック解除に成功した『桜庭先生』のモノマネっつったら、もう瓜二つって言っても過言じゃないレベルなんです。

2人の声を録音してクラスのみんなに「どっちが先生でしょうか?」って問題を出しても、半数が間違うってレベルなんですよ。

なので飲み会が盛り上がってきたところで「桜庭先生のモノマネでもろきゅうの魅力について熱く語ってくれ」ってお願いしました。

当時の桜庭先生の授業を彷彿とさせるイントネーションで、そりゃー面白かったです。面白かったんですけど、ちょっと寂しかったですよね。

というのは、堀くんも12年振りくらいにやったもんですから、技術が錆び付いとるわけです。多分ですけど、その場にいるみんな「あれ、なんか違くね?」って思ってました。

でも、笑ってあげなきゃ堀くんが可哀想だと思ったのと、言いたいことはわかる感で笑ってたって感じだと思うんです。少なくともおりはそうでした。

逆に10年もの間、品質を落とさずにキープしてたら、それはそれで引きますけどね。「オメーやってたろ?」っつって。

「桜庭先生、結婚したんですか?」とか「カップヌードルはシーフードですよね?桜庭先生?」とか、無茶振りしまくってたら「ダメ元で一応、桜庭先生に声かけてみない?」って話になりまして。まさかの『ご本人登場』に白羽の矢。

携帯電話とか番号変わってるかもしんないけど、一応かけてみたら普通に出たんです。2コールくらいで出ました。「桜庭先生、ヒマなんすか?」って聞いたら、後ろで堀くんが「そうなんだよ、暇なんだよー」とかやってましたけど。

結果、桜庭先生も「ぜひ行きたい」と言ってくれまして。まぁワクワクしながら待ってたわけです。まだかなまだかなーっつって。そんで、待ってる間も思い出話に華が咲いたりしてたんですけど、一向に桜庭先生が来ないんですね。

こっちは酔いも進んできて、もう帰ろうかーくらいの感じになってるんです。なんなら1人トイレからしばらく帰ってこない奴もいたりするわけです。

さーて、帰るかーくらいのタイミングで「ごめんごめん、遅れちゃったよー」っつって、財布・・・じゃなかった。桜庭先生が到着しました。

「おぉ!先生、久しぶりー!」っつって、外見は白髪が出てきたかな?っつー程度で、あんま変わってなかったんですけど、当時すごく特徴のあった声があまり特徴が無くなってまして。

どうやら喉を手術して声質が変わったとのことでした。手術するなんて大変だったんですねーなんつって。もう当時と比べたらだいぶ声変わってるんですけど「初めて聞いた感じしないんだよなー」って。

「なんかのタレントに似てるのかなー」なんて考えたら、さっき堀くんがやってたアレにそっくりだわーっつって。

堀くんのモノマネが12年のときを超えて具現化してた。たぶん堀くんはキングクリムゾンかなんかの使い手かもしれないっつって。

『事実は小説より奇なり』なんて言いますけど、本当にそうです。嘘みたいな話でしょ?ビックリしますよね!

まぁ、嘘みたいな話っつーか、もはや嘘なんですけど。

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